舌下免疫療法とは?

アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を微量ずつ長期間にわたり投与することで、アレルギー反応を起こしにくくする免疫寛容の状態を作り出すというアレルギー免疫療法(減感作療法)のひとつです。
20~30年前は、皮下注射によってアレルゲンを投与する皮下免疫療法が主流でしたが、痛みを伴い頻回の通院が必要だったため、次第に行わなくなりました。舌下免疫療法はアレルゲンのエキスを自分で服用するため、自宅で手軽にでき、副作用が皮下免疫療法に比べて少ないのが特徴です。 現在のところ、国内では、ダニアレルギーによる鼻炎とスギ花粉症に対して治療が認可されています。

治療効果

舌下免疫療法の対象者(大人も含みます)

治療方法

舌下免疫療法は、1日1回舌の下にアレルギーの原因物質のエキスを含み、口腔内の血管から体内に吸収させる(舌下投与)ことで、アレルギー反応を起こしにくい体質を作り出す方法です。投与するエキスの濃度が一定まで上がれば、月1回の通院で治療が可能(自宅での舌下投与は毎日必要)ですが、アレルギー反応を起こさない程度の体質になるまでは3~5年の治療継続期間が必要とされています。

副作用

ダニやスギ花粉といった物質にアレルギーをお持ちの患者さんにそのエキスを投与することで治療を行いますので、当然のことながらアレルギー反応が起きる可能性があります。(あくまで理論上の可能性ですが、重篤な場合ではアナフィラキシーショックとよばれるような強いアレルギー反応を生じる可能性があります。)
但し、これまでの海外・国内での実績では、舌下免疫療法にともなう重篤な副反応はきわめて稀であり、従来の注射による免疫治療よりもかなり安全とされます。(舌下免疫療法によるアナフィラキシーショックは投与10万回に1回、副反応4000例のうち1例程度との報告があります。また、ショックに至るような事例は通常の服用例ではなく、過量服用や体調の悪い時が多いといわれています)
ごく軽度の副作用も含めて、下記のような報告があります。

  1. 口内、口唇のかゆみ・口腔内や舌根部の浮腫、感覚の異常
  2. 蕁麻疹
  3. 腹部症状(嘔吐、腹痛、下痢など)
  4. 喘息発作
  5. その他(耳のかゆみ、喉の炎症や違和感、くしゃみ、鼻みず、鼻詰まり、目のかゆみ、)

舌下免疫療法の薬の飲み方

ダニアレルギーに対する治療

舌の下に免疫治療薬の舌下錠を置きます。舌の裏に1分間含んで、その後に飲み込みます。服用後5分間はうがい・飲食を避け、服用の前後2時間程度は激しい運動・入浴といった血圧や血流の変動を伴うような行動を避ける必要があります(これまでの経験では、学校の1時限目の体育で、症状の出た方はいません)。
治療開始から1週間の間は黄色のラベルの錠剤(3300JAU)を使用し、2週目からピンク色のラベルの錠剤(10000JAU)を使用します。1回目の舌下投与は医療機関内で行いますが、以降は毎日自宅で行います。

スギ花粉症に対する治療

ミティキュアと同じ要領で服用しますが、1週間は黄緑のラベルの錠剤(2000U)を使用し、2週目から青のラベルの錠剤(5000JAU)を使用します。

治療の継続と終了

一般的に舌下免疫療法では3~5年間、治療を継続することが推奨されています。数年間の治療を行い、アレルギー症状の治癒(症状が消失する)や寛解(症状が楽になる)が得られたら、いったん治療を終了することになりますが、治療を終了すると、効果が減弱して将来的にまた症状が再燃することもあり得ます。その場合はまた舌下免疫療法を再開すると、すみやかに治療効果を得られるとの報告もなされています。治療の中断・終了は自分で判断せず、医師にご相談ください。

舌下免疫療法が受けられない方

  1. ダニやスギに対するアレルギーが検査で証明できない方
  2. ダニやスギの単独ではなく、他のアレルギー原因物質にも感さされている方
  3. 重症の喘息を合併している方
  4. 重症の心疾患・肺高血圧症の方
  5. 重症のアトピー性皮膚炎の方
  6. 自己免疫疾患や免疫不全症などの方
  7. 妊婦・授乳婦の方
  8. 本剤の投与でショックを起こしたことのある方
  9. ステロイド薬や免疫抑制剤を使用している方
  10. ベータブロッカー、三環系抗うつ薬、MAO阻害剤を服用中の方

診察の際に、持病や普段服用されている薬をきちんとお知らせください。

よくある質問

治療にかかる費用はどれくらいですか?(院外処方)

新潟市のこども医療費助成受給者証をお持ちの方は、すべて込みで530円になります。
3割負担の場合、調剤薬局で、ミティキュアは、1か月約1800円(月一回の受診)、シダキュアは約3200円(月2回の受診)位です。これに加えて、診察料や処方料が必要です。また、症状がひどい時に追加で服用する抗アレルギー剤が必要な場合があります。

舌下免疫療法はいつでも開始できますか?

ダニアレルギー

体調の悪い時でなければ、年中いつでも開始できますが、ほとんどのダニアレルギーの方は梅雨時(ダニの増殖期)や秋口(気温が下がってダニが一斉に死滅するため大量の死がいが発生)に症状が悪化するため、アレルギー症状がきつい時期は避けた方が無難です。

スギ花粉症

効果発現まで少なくとも8~12週間は必要とされており、スギ花粉の飛散が始まる3ヶ月以上前から治療を開始することが必要です。6月から11月末までのあいだに治療を開始します。スギ花粉飛散期はスギ花粉に対する患者さんの過敏性が高まっていることから、12月を過ぎてしまうとスギ花粉の飛散が終了する6月まで新たに治療を開始することはできません。

舌下免疫療法は、即効性がありますか?

症状に対する治療ではなく、アレルギーを起こす原因物質に対する免疫反応をやわらげる(体質を変える)治療です。長い期間かけて少しずつ良くなっていきますので、まず2年間は舌下免疫療法を行い、効果判定を行います。その時点で効果がみとめられた方は4~5年間の治療継続を勧めています。
一度数年間の治療を継続すれば、治療終了後も効果が持続すると考えられています。その後効果が減弱した場合は、治療を再開すれば効果が元に戻るといわれています。

ダニやスギ以外のアレルギーがありますが、舌下免疫療法は効きますか?

日本国内で保険適応となっているのは今のところダニとスギ花粉に対するアレルギーでありそれら以外のアレルギーには効果がありません。
同時に複数のアレルギーをお持ちの場合、ダニやスギのアレルギー反応が治療によって緩和されても、そのほかのアレルギーでひどい症状が出れば、結局楽にならないということがあります。従ってスギやダニ以外にも強いアレルギーをお持ちの方にはあまりお勧めできません。(もちろん、多種のアレルギー反応をお持ちであっても、ダニやスギに対するアレルギーが一番強く、この2つだけでも軽症になれば、日常生活上大きなメリットがあるという場合は投与することは可能です)
そのような観点からも、血液検査ではダニ・スギ以外にもアレルギーをお持ちでないかどうか調べます。(現時点では、ダニアレルギーとスギ花粉症の舌下免疫治療薬を2種同時併用することもできません)

舌下免疫療法を途中で止めましたが、もう一度再開できますか?

再開はできますが、中断の期間によっては最初の投与量からとなります。濃い濃度の薬でいきなり再開すると副作用が出やすくなるからです。
ダニ・スギそれぞれの免疫治療薬ともに、一般的には維持期に達していれば、2週間程度の休薬は問題ないとされています。数日程度であれば旅行や出張にまで持参して服用する必要はないということです(環境が変わってストレスがかかっているときに無理に服用すると、副作用も出やすくなります)
一か月以上服薬しない期間が続いた際は、あらためて初めからリセットしたほうが安全と思われます。

舌下免疫療法の治療中に、症状がひどければアレルギーの薬を使ってもよいのですか?

ステロイドが含まれている内服薬以外であれば、アレルギー性鼻炎の薬は内服可能です。(内服ステロイドを使用すると、免疫反応を抑えてしまいますので、舌下免疫療法の効果を打ち消してしまいます。もちろん、あまりに症状がひどいときにだけ、まれに頓用するのはかまいませんが)ステロイドを含む外用薬(点鼻・点眼薬)は制限なく併用可能です。舌下免疫治療を受けられる方は、もともと症状がきつく、それを緩和したくて舌下免疫療法を受けられる方が多いので、大半の方がアレルギーの薬と併用され、症状が緩和されてくると徐々に減らしていくという方が多いです。

舌下免疫療法を希望される患者さんへ

治療の流れ

その他の治療

当院では、舌下免疫療法以外にも、従来からの、喘息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(じんましん)等の各種アレルギー疾患の診察も行っています。

乳児期の湿疹や食物アレルギー

小児アレルギーは、下痢、嘔吐、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(じんましん)、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、頭痛など様々な症状で表れます。
小児食物アレルギーで乳幼児が、アレルギーを起こしやすいのは、卵、牛乳、小麦です。年長になるに従って、犬・猫などの動物、魚介や甲殻類(カニ・エビ)、ソバ、ピーナッツ他のナッツ類、果物(キウイ、スイカやメロン、マンゴー)などアレルギーを起こしやすい食物が増えてきます。
近年、乳幼児の食物アレルギーは、乳児期の湿疹として発症し易いということが解明され、むしろ少しずつ食することで治療になることがわかってきています。そのため乳児期からの湿疹の治療管理やスキンケアに関する指導がとても重視されるようになりました。当院では、体の洗い方から、各種保湿剤の使い分けなどのスキンケアを徹底して、各種アレルギーの予防をお勧めしています。
当院では、血液検査や食物負荷試験(院内で食事をして体調の変化を観察する検査、重症ではない、また原因が1~2の抗原に限られる場合)などをして、食物除去・治療の目安としていきます。さらに、アナフィラキシー(アレルギーによる急性の全身反応)を起こされた方には、エピヘン(アドレナリン自己注射器)の処方・使用方法の指導をさせて頂きます。
様子がおかしいなど、気になることがございましたら、気楽にご相談ください。まず、受診していただき、必要があれば検査を、重症なら適切な専門医のいる病院にご紹介いたします。